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社畜な鯱狗の妄想雑記

ファシスト見習い。すべては音楽。詩集『円周』。

鯱狗の「プロレス論」自選集!(爆)

✳︎

折角なので、纏めておきましょう(笑)。



《起業反逆者様!…喧嘩、売りに来ました!》

たぶんコレが、鯱狗の中でも「決定版」。
オカダファンを「公言し辛い方」への、
鯱狗なりの「一つのメッセージ」かなw


【2】内藤哲也
《【総書記】内藤哲也の「ピーク」は近い》

リンク先も含め、鯱狗の中での「最終版」。
…こう見えて、内藤ファンでしたよ?(苦笑)


【3】高橋ヒロム
《【教祖】ヒロムの「コメント」の件》

むしろ「リンク先」こそ「必読」かと思う。
かつてプロレスを愛したファンの方の言葉。


【4】柴田勝頼
《「明るい未来」しか見えねぇよ!!!》

膨大なリンク先の全てが、鯱狗にとっては、
大切な「想い出」。そして…「裏切った」。


【5】棚橋弘至
《拝啓、太陽のエース殿》

いつも「苦言」を呈してばかりいましたが、
最終的に行き着くトコロは「愛してます」。


【6】後藤洋央紀論(苦笑)
《…もしも、ヨシタツの「メンタル」が》

以上!!!(爆)


【7】ヨシタツ論(失笑)
《リベラルチェッカー・ヨシタツ(笑)》

割と真面目に、ナンダカンダと鯱狗が、
ヨシタツを「応援」した「理由」かなw


【8】鯱狗なりのプロレス観
《日プロ史上、最も「アメプロに肉薄した」試合…99.4.10東京ドーム》

もちろん、コレが「正しい」ワケじゃない。
それでも、一つの「観るべき試合」として。


【9】「KUSHIDA脳震盪アングル」問題
《ハァッ!?「サイテーの大問題」ですよ!!?》

《返せ。》

…今すぐ、説明して下さい。
新日本プロレス株式会社殿。


【10】無期限休業宣言
《あーあ、潮時かな!(笑)》

「さよなら」は、不要です(苦笑)。


【11】エピローグ
《約束は、果たされる》



以上!!!!!

先頭車両の気狂い

✳︎

嘘のような。
本当の話でも、しようか。
実に、今朝ほどの、ことさ。

肘が当たったか、足を踏んだかの、
騒ぎが、一つ前の、電車であって。
私が、飛び乗った先頭車両は、
実際のところ、飛び乗るまでもなく、
発車する気配など、無かった。

そんな、先頭車両に、
乗っていた。先客の一人が。
件の、気狂いであった。

大丈夫?大丈夫?

気狂いは、まるで。
田舎の特急で、車掌が検札でも、
するかのように。
頭を、がっくんがっくんと、
させながら。先頭車両を練り歩き、
乗客に訊ねて、廻っている。
トランシーバーのように、
ペットボトルを、耳元に当てた、
気狂いは。幸いにも、暴力的では、
なかった。

大丈夫?大丈夫?

訊ねられた乗客は、無視を決め込むか、
稀に、穢れを見てしまった。
そんなような、顰め面をする者も、
いたが。しかし、誰一人、
気狂いの問いに、答える者など。
もちろん、いない。

大丈夫?大丈夫?

そして、私は気付く。
坊主に頭を剃った、気狂いは。
決して、やたらめったらと。
片っ端から乗客に、訊ねている、
わけではない。何か、気狂いには、
気狂いなりの、道理があって。
祝福すべき人、もとい、
訊ねるべき人を、選別して。
練り歩いて、いる。

大丈夫?大丈夫?

私の、手前の、
女の人が、訊ねられた。
無、反応。

大丈夫?大丈夫?

私を、飛ばして。
次の、次の、次の辺りの、
どなたかに、訊ねている。

大丈夫?大丈夫?

そうか、私は。
気狂いの、道理に依れば。

大丈夫?大丈夫?

訊ねるべき人では、なかった、
らしい。

大丈夫?大丈夫?

其れは、何か、恐るべき、
先頭車両の、啓示から。
私という人間は、
漏れて、しまったという。
つまりは。
そういうことでは、
なかったのか。

大丈夫?大丈夫?

そのような、疑念に。
囚われる私が、
正気と、呼べるのか、
果たして。などと。

大丈夫?大丈夫?

肘が当たったか、足を踏んだかの、
騒ぎが、一つ前の、電車であって。
私が、飛び乗った先頭車両は、
実際のところ、飛び乗るまでもなく、
発車する気配など、無かった。

大丈夫?大丈夫?

先頭車両の気狂いが、
訊ねて、廻る。
練り歩いて、いる。

大丈夫?大丈夫?

いったい、どれほどの、
正気の人が。
先頭車両には、乗っていると、
いうのだ。

大丈夫?大丈夫?

私が、思わず叫ぶ。
ことは無い。決して。

大丈夫?大丈夫?

嘘のような。
本当の話の、此れが顛末。
実に、今朝ほどの、ことさ。

大丈夫?大丈夫?

私の脳裡に、リフレインする。

大丈夫?大丈夫?

ねぇ。其れは、実際のところ。

大丈夫?大丈夫?

他ならぬ、貴方の、脳裡にも。

大丈夫?大丈夫?

リフレイン、しているんだよ。

大丈夫?大丈夫?

大丈夫。大丈夫。

【青春タンクデサント】a3「The Tuning」

✳︎

    大粒の雨が、絶え間無く、窓ガラスを叩く昼下がり。
    僕はぼんやりと、ベッドに寝そべっていた。
    姫宮絵里に借りた音源を、垂れ流す。イギリスの、良く知らないバンドのベスト盤。ゆったりとしたストリングスがワルツ調を刻む上に、気怠いボーカルが乗る。

(……ん〜、例えば、だけど)

    まだ、そう古びてもいない記憶の中で。
    姫宮絵里が、一生懸命に、説明を始める。

「……ん〜、例えば、だけど」
    市営図書館の中庭の、木製のベンチに腰掛けて。
「犬飼君が、電車で座っていたとするよね?」
    三つ編みのお下げを、右手の指先でくるくるとする癖を披露しつつ。
「そこに、おばあちゃんが乗ってくるの」
    野暮ったい眼鏡の向こうで、くりっとした瞳をぱちくりさせながら。
「そしたらね、犬飼君は、迷わず、自然に席を譲る」
    姫宮絵里は、理解るような、理解らないような、そんな喩え話を、僕に語ってくれる。
「……それは、自発的に、ってこと?」
    葉桜の下、柔らかな木洩れ日が降り注ぐ。
「うん、そう」
    こじんまりとした噴水を背景に、クラスメイトの少女は、真っ直ぐに僕を見つめる。
「そういう『優しい気持ち』が、自然と湧いてくるの」

「……理解んないな」

    僕の口元が、微かに歪んだ。
「ソレが『正しい』ってコトなのか、僕には」
    そうして、姫宮絵里を困らせる。嫌なヤツだ。
「うん……でも」
    彼女は伏し目がちに、しかし、はっきりと。

「『間違ってはいない』から。きっと」

    僕に、そう告げた。
    若いカップルの連れたダックスフンドが、何だか不思議そうな顔で、こちらを見ている。
「……ソレが、『実感』?」
「……ううん。最初に言ったでしょ?」
    穏やかな、日曜の昼下がり。
    町の喧騒を離れた、図書館の中庭で。
「『例えば』の話、って」

    ーー姫宮絵里は、嘘が下手だった。

    大粒の雨が、絶え間無く、窓ガラスを叩く昼下がり。
    僕はぼんやりと、ベッドに寝そべっていた。
    結局、聞けず終いだった「問い」。

「姫宮さんは、もう“チューニング”受けたんだ?」

    もし、僕が、真正面から。問い質していたなら。
    あの「優しい少女」は、正直に答えてくれたのか。
    それとも、やっぱり、下手クソな嘘を吐いたのか。
    僕が「本当に聞きたかった答え」は、喪われたまま。

《Yes, it really really really could happen》
《When the days seem to fall for you, and》
《Just! let them go……》

    姫宮絵里から借りた、良く知らないイギリスのバンドの音源が。どこか皮相に、コーラスを歌い上げる。
    机の引き出しには、“チューニング申込書”が「記入済」の状態で眠っているのを、僕は知っている。
    土砂降りの日曜。
    姫宮絵里の、葬式の翌日。
    僕はぼんやりと、ベッドに寝そべっていた。

賢人と狂人、対比の試み

ae7chu.hatenablog.com

orcadawg.hatenablog.com

 

✳︎
コレは、キャッチ22だ。思い知る。
 
私は、狂っているほどには、狂っていない。
私は、狂っていないほどには、狂っている。
 
私は、正しいほどには、正しくない。
私は、正しくないほどには、正しい。
 
私は、亡霊と会話をするほどには、死んでいない。
私は、亡霊と会話をしないほどには、死んでいる。
 
コレは、キャッチ22だ。思い知る。
 
東方へ。西方へ。
バジリスクをも殺す、砒素を求めて。
 
私は、いったい。
いつまで、彷徨い続ければ、良いというのだ。
 
You know you’re right.

【青春タンクデサント】a2「交通事故の葬式の帰り、理不尽なB級映画談義」

✳︎

    姫宮絵里の葬儀は、町を挙げて執り行われた。“祝福”と言っても、市を挙げるほど「珍しいことでもない」。所詮は、行政の予算との兼ね合いだろうか。
「姫宮さん、おめでとう!」
「姫ちゃん、バイバイ!」
    棺の中には、きっと。顎から上の吹き飛んだ、姫宮の遺骸が、横たえられているのだろう。中を見ることは許されず、僕らはただ、祭壇で花に囲まれた、三つ編みのお下げに、野暮ったい眼鏡の彼女が、写真の中で控えめに微笑むのを、仰ぎ見るばかりだ。
    姫宮は僕なぞと違い、クラスメイトに友人が多くいた。特に女子の間では「姫ちゃん」と、可愛がられていた。
「……えー、このたびは“絵里を見送る会”に、学校の皆様方、そして町長様の御出席のほど賜りまして、えー、改めまして、感謝のほど申し上げます」
    姫宮の父親のスピーチを、ぼんやりと聞き流しつつ、先程の、クラスの女子の様子を思い出す。

    確かに、彼女達は、泣いていた。
    まるで、卒業式で、互いの門出を祝うように。
    その涙は……あの日。
    僕が、男子トイレの床に這い蹲って流した、涙や鼻水とは、決して「同じではない」はずだ。
    それだけは、誓って、言っても良い。

    滞り無く、式次第は済んだ。
    ちょっとした事件は、それから起きた。
    会場の出口で、参列者に頭を下げて回る、姫宮の母親の方へ。つかつかと歩いていく、真っ赤なヘアバンドの女子生徒が視界を掠めて、僕はぎょっとした。
(……睦美先輩!?)
    引き留める間も無く、彼女は、姫宮の母親に相対して。
「此度、絵里さんの“祝福”、お悔やみ申し上げます」
    丁寧に、御辞儀をした。
「『お悔やみ』なんて、とんでもございませんわ」
    姫宮の母親は、にこにこと、首を横に振る。
「……失礼致しました。こんな『ハレの日』に」
    先輩が、改めて、頭を下げる。淡々と、無表情に。
「付かぬ事をお伺いして、よろしいでしょうか?」
「あら、何かしら?」
    目をぱちくりとさせる表情で、僕は、姫宮絵里が、母親似であったことを知る。

「絵里さんは、“チューニング”は、もう済まされていたのですか?」

    鼓動が、跳ねた。
    ーー僕が結局、本人に、聞けず終いだった「問い」。

「ええ。高校に上がる時に、済ませていたわねぇ」

    僕は、その「答え」を。
    あっけらかんと、彼女の母親の口から聞くのか。

「そうですか……すみませんでした、お忙しいところ」
「いぃえぇ、お気になさらず。あなたこそ、絵里のために御足労を頂いて、ありがとうねぇ」
    会話を終え、踵を返そうとした睦美紅子と、目が合う。
「犬飼恭兵……いたのか」
    今度は先輩が、ぎょっとする番だ。
「すいません、盗み聞きしてしまって。あと、犬飼でイイです」
    散開する喧騒を避けるように、“タンクデサント部”の僕達は自然と、会場の裏手に向かって歩き出す。
「……悪かったな」
「……何がです?」
「いや、姫宮絵里の、“チューニング”の件」
    商売っ気の無い自販機に隣接した、ベンチを見付けた。
「ああ、別にイイですよ」
    先輩に腰掛けるよう促して、その背後で、僕は五百円玉を自販機に投じる。

「……知ってましたから」
    ーー嘘は、言っていない、はずだ。

「はい、どうぞ」
「ぇ、あ……済まない、気を遣わせたか」
    隣に座って、差し出したアイスの缶コーヒーを、睦美紅子に受け取らせた。ぷしっ、と、気の抜けた音を立てて、プルトップを押し込む。
「先輩も、フツーに喋れるんですね?」
「……まぁな。傲慢なりに、テーピーオーは弁えるし」
    その「テー」の発音は照れ隠しなのか、とは、突っ込まないでおく。
「それに、葬式で、にこにこと、はしゃぐような人間には、なりたくない」
「……さいですか」
「何だ、その、気が抜けた『さいですか』とは。照れ隠しか、何かか?」
    噛み合わない会話に、仕方無く、僕は曖昧な、愛想笑いを返した。
    安っぽいプラスチック製のベンチに体重を預けて、仰ぎ見るのは、鉛色の曇天。

「“交通戦争”という言葉を、貴様は知っているか?」

    甘ったるい缶コーヒーを啜って、唐突に、睦美紅子は切り出した。沈黙を厭うかのように。
「昭和の、話ですか?」
「そうだ。まだ、人が車を運転していた、時代の話だ」
    吊り目がちの、力強い眼差しが、僕を見据える。
「年間に二万人近い人が、亡くなっては」
    思わずたじろぐ僕を、構うこと無く。
「なんて『理不尽』な話だと、嘆いたそうだよ」
    梅雨の匂いの、風が吹く。先輩の長い黒髪を、弄ぶ。
「その『嘆き』の積み重ねが、今の私達の社会を、築いているワケだ。全自動で車が走る、社会を」
    そして僕から目線を逸らした先輩は、やはり「美少女」ではなく、「美人」であるように、映った。

「……なぁ、貴様は『不条理』だと、思うか?」

    何処か、遠くの方を見つめながら、訊ねられた。
「教室の窓ガラスを割ることも無く、姫宮絵里の命を奪った、“祝福”の銃弾が」
    ーーソレは、逃れられない。
    みんな、知っている。
    金持ちも貧乏人も、関係無い。
    たとえ、地下室に立て籠もったところで。
    “祝福”が、訪れる時には。
    ソレを防ぐ手立ては、存在しない。
「……そうですね。きっと『不条理』なんでしょうね」
    みんな、知っている。

「ッ、それでは『ダメ』なんだ!!!」

    ハスキーで明朗な声を荒げて、いきなり、睦美紅子は、立ち上がった。
「いいか、それでは『ダメ』なんだ!」
    呆気に取られる僕を、真っ直ぐに、見下ろして。
「いいか、私達、“タンクデサント部”は!!!」
    先輩が、叫ぶ。

「『不条理』と『理不尽』を、明確に『区別』する!」

    色褪せた水色のベンチに座る、たった一人の聴衆に。
カフカなんて、駄作だ!グレゴール・ザムザは、毒虫なら毒虫らしく、大暴れして、自分を侮る家族など、食い殺してやれば良かったのだ!まるでB級映画みたいに!」
    両手をブンブンと振り回して、演説をする人がいた。
「いいか、貴様の!……貴様の」
    一呼吸を、置いて。

「貴様の流した涙だけが。姫宮絵里を、救ったんだ」

    静かに。睦美紅子は、僕に告げた。
「誇りに思え。“タンクデサント部”の、一員として」
    遠くで、雷鳴の音がした。雨も降っていないのに。
「“タンクデサント部”は、『戦う』ぞ」
    無意識の内に、僕は、立ち上がっていた。
「この世の、およそ『理不尽』というヤツと」
    真っ赤なヘアバンドを、見下ろす。
「……返事は!!!」
    高らかに宣言した、先輩を前にして。

「はい、部長!!!」

    熱に浮かされたように、僕の、腹の底から。
「うむ、よろしい!」
    フッと、緊張の糸が切れた破顔を見せて、睦美紅子は首肯する。そして僕の頭を、くしゃくしゃと撫でた。
「ちょっ、何をするんで、ちょっと!?」
「フッフッフッ、愛いヤツだ、可愛い後輩だ」
    にやにやと僕をからかう先輩は、また、ただの「変な美人」に戻ってしまったようである。
「……さて、一雨、来そうだな」
    制服のスカートをくるりとはためかせて、バス停のある正門に向かって、先輩が歩き出す。
「だから、ちょっと、待って下さいって!」
    姫宮絵里の“祝福”の日に、職員室で替えて貰ったブレザー姿の僕が、後を追う。
    それも間も無く、夏服に変わる。

    “姫宮絵里を見送る会”の、翌日の日曜は。
    朝から、土砂降りであった。

【茜橋で待ってます】完結キター!!!(≧∀≦)

yoshitakaoka.hatenablog.com

yoshitakaoka.hatenablog.com

 

✳︎
最近、発見したコチラのブログ様!!!
 
めちゃくちゃ「澄んだコトバ」を書かれていらして、
更新が楽しみで楽しみで、仕方無かったのですが!
 
特に、今回の『茜橋で待ってます』は、
もう、ド真ん中のド真ん中を行く、
 
「青春小説」で、ございまして。
 
もう後編が、ホントにホントに楽しみで!(//∇//)
 
…正直、「暗号」については、
前編で察しが付いていただけに、
「ああああ、この流れは、この流れは!」
と、鯱狗は、後編の途中で、
一人で悶えていたのですが(苦笑)。
 
 
 
「そんなに遠くないよ」
 
 
 
って。スゲェ。スゲェとしか言えない。
 
こんな「澄んだコトバ」。
 
なかなか見ることは、叶わない。
 
 
 
「そんなに遠くないよ」
 
 
 
ヤバいね。
 
ぶっちゃけ涙脆い鯱狗には、ヤバかった(小声)。
 
作者の高岡ヨシ様、
素晴らしい作品を、
ありがとうございましたm(_ _)m
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ああああ、こんなコトなら!
 
こんなに早く、後編を読めると、知っていたなら!
 
小説形態としては、約8年ぶり、
一人称モノとしては、約12年ぶりに、
変なモノ、書かなきゃ良かったorz
 
 
 
ではでは(白目)。

【青春タンクデサント】a1「祝福と、喪失と、出逢い」

✳︎

    一人称の小説というのは、よろしくない。
    小説というのは、やはり三人称でなければ。一人称の小説は、究極的には、すべて「ジュブナイル」に括られてしまうのだからーー。

「……あの、犬飼君?」

    昼休みの教室の片隅で。まったく流行る兆しの無い、書評サイトを更新していた僕に。おずおずと声を掛ける、奇特な女子がいた。
「この間、借りた本、返すね?……どうも、ありがとう」
    ハインラインは『夏への扉』の、文庫版。いつかは原語で読みたいと願うが、あいにく、僕の英語の成績は、推して知るべし、といったところか。
「犬飼君は、今は、何を読んでるの?」
    三つ編みのお下げに、野暮ったい眼鏡。この、姫宮絵里は、戯画的なほどに、古き佳き「文学少女」の風情を、漂わせている。
「……コーミア。『チョコレート・ウォー』」
    これだから、僕は「コミュ症」の誹りを逃れ得ない。
    実際、姫宮は「野暮ったいだけ」であって、地金は、人受けのする美少女といって、差し支えあるまい。瞳がくりっと大きいことが、庇護欲を掻き立てることについては、「絶滅危惧種への寄付金の寡多」の研究を通じて、科学的に証明されていたはずだ。
「……変わってるね、犬飼君は」
    微苦笑を浮かべて、姫宮は続けた。

「犬飼君は、まだ“チューニング”受けてないんでしょ?」

    その話題が出るか。少し、食後の眠気が覚める。
    さて、その件については、何と言い訳をしたものか、などと、思案を始めた、次の瞬間だった。
    ガラガラガラ、っと、立て付けの悪い、教室の後ろのスライドドアをこじ開けた者が、叫ぶ。

「犬飼恭兵は、いるかい!!!」

    フルネームで呼ばれ、反射的に振り返る。
「あいや、駄洒落ではないぞ、決して!」
    ハスキーで明朗で、ついでに間抜けな声を、教室中に響き渡らせたのは。ストレートの黒髪を腰まで伸ばした、見知らぬ女子生徒であった。
「私の名前は、睦美紅子!貴様に、少しばかり、用がある!留守か!?」
    流石に、教室の空気がざわめき出す。明らかに、僕にとっては、気まずい状況だ。目の前の姫宮も、目をぱちくりとーー。



バスッ。



    姫宮の、頭が。
    姫宮の頭が、電子レンジに掛けた卵のように、弾ける。
    姫宮の脳漿が、ビシャリと、僕の顔面を汚す。
    姫宮の眼鏡が、砕けて、床に散らばる。
    姫宮の華奢な体が、隣の机に叩き付けられ、崩れる。
    ブレザーに身を包んだ、姫宮の華奢な体が。
    チェックのスカートが捲れて、パンツが丸出しになっても、姫宮が恥ずかしがることは無い。血に混じって、尿の漏れたらしき臭いが、鼻を突く。

    姫宮絵里は、即死した。
    スナイパーの銃弾に、脳幹を破壊されて。
    享年16歳。

    そして教室は、蜂の巣を突いた騒ぎに見舞われる。
「え!?誰!?誰!!?」
「姫宮さん?マジで!?」
    状況を把握して、やがて、皆が声を張り上げる。
「おめでとう!おめでとう!おめでとう!」
「姫宮さん、バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
「姫宮さんが、幸運にも“祝福”の対象となりました!」
    蜂の巣を突いた狂騒の教室を。僕はこっそりと後にする。何より、顔を洗いたいし、制服の替えを、職員室に貰いに行きたい。一刻も早く。
    廊下に姫宮の血をぼたぼたと滴らせながら、僕はよろよろと、男子トイレへ駆け込む。
    そして、始業のチャイムを聞きながら、僕は個室に倒れ込むように、嘔吐した。
    一通り、胃の内容物を出し尽くしてから、やはりよろよろと、洗面台に向かう。ようやく、姫宮の脳漿を、頬や鼻腔から洗い落として、思わず漏らす。

「……何が“祝福”だよ。クソが」

「『何が“祝福”だよ。クソが』とな?」

    一瞬にして、血の気が引く。ーー聞かれた?

「貴様の、その『現状認識』は、まったく正しい。そうとも、私達は、まったく『戦時下』にあると、考えるべきなのだから!」
「……誰ですか?」
「睦美紅子だ。この私に、二回も名乗らせるな、“ワトソン小林”君よ」
    多少、安堵しながら振り返り、一方で、聞き捨てならないことを、聞いてしまった。
「……何で、そのハンドルネームを?」
「たまたまな、貴様が、書評サイト《ベイカーストリート怪奇四十番地》を、帰宅の電車の中で更新しているところを、目撃してしまったのだよ」
    思わず、溜息を漏らす。サイトについては、誰にも明かしたことは無かった。
    そう、姫宮絵里にさえ。
「残念だったな。アレは、貴様の彼女だったか?それとも、まだ片思いだったか?」
「……少なくとも、彼女ではなかったです。てか、図々しいにも、程がありますよね?」
    流石に、苛立ちを抑えられない。
    この人は、いったい何者なのだ?
「そうだな。しかし、私は謝らぬさ」
    午後の授業が始まった男子トイレに、堂々と腕組して立つ、この女子生徒は。
「何故なら、この睦美紅子は、その図々しさに足るだけの『美少女』であり」
    姫宮の血塗れの制服を纏ったまま、呆然と立ち尽くす僕を、いわゆる「ドヤ顔」で、真っ直ぐに見下ろして。

「疑う余地無く、『この物語のヒロイン』であるのだからな!!!」

    自称「美少女」にして「この物語のヒロイン」こと睦美紅子は、そう、宣言したのだった。

「そして私は、遅れ馳せながら、二年生にして、ここに、学校非公認の“タンクデサント部”の設立を、宣言したいと思っている。もちろん私が部長であり、貴様が栄えある部員第一号であれば良いと考える!」
「タンク……デサント?……はぁ??」
「さぁ、返答や、如何に!」
    思考が、まるで追い付かない。
「ちょ、待っ……何ですか、その、“タンクデサント部”ってのは……?」
    この十五分足らずの間に、あまりに多くのことが、起こり過ぎている。
「ふむ、そうだな……活動内容は、例えば」
    一つ上の先輩らしき睦美紅子は、口元に手を当てて、言葉を選んでいる。
「『“チューニング”の拒絶』であったり」
    背筋を、ぞくりと、冷たいものが走る。

「君が、たった今、亡くした彼女は、まったく“祝福”などではなく、ただの『無意味な犬死』でしかなかったと、堪えること無く、今、ここで、大いに『泣く』ことだ」

    僕が、答えることは無かった。
    ただ、気が付けば、泣いていた。
    泣きじゃくっていた。
    声を上げて。鼻水を垂れ流して。
    それは「あり得ないこと」なのに。
    “祝福”を嘆いて、泣くことだなんて。

「……気は、済んだかい?」

    トイレのタイルに這い蹲って、一頻り泣きじゃくった僕に。睦美紅子が、ハンカチを差し出す。ペイズリー柄に、薔薇の刺繍というのは、少々、いや、かなり悪趣味で、思わず、笑いが溢れる。
「な、何が可笑しい、犬飼恭兵よ!?」
「……いえ、何でも。あと、犬飼でイイです」
    最後まで、よろよろと、僕は立ち上がる。
「それと先輩。一つイイですか?」
    姫宮の血は、既に乾き始めていた。
「先輩は、確かに、文句無しの『美人』ではありますけれど。吊り目でキツい印象ですし、おまけに、その真っ赤なヘアバンド」
    吐瀉物と鉄の匂いが立ち込める男子トイレで、その人は、きょとんとした顔をする。
「ケバいってか、とりあえず『美少女』って感じじゃ、全然、無いっスから」
「な、ぬわにを〜!?」
    職員室に向かって歩き出した、僕の背中で、いきり立ってみせる。

    それが、もしかして僕の初恋だったかもしれない、三つ編みに野暮ったい眼鏡の、姫宮絵里を喪失した日であり。

    書評サイト《ベイカーストリート怪奇四十番地》の、一人称の小説に批判的な管理人である“ワトソン小林”こと、僕、犬飼恭兵が。

    自称「美少女」にして「この物語のヒロイン」こと、ストレートの黒髪と真っ赤なヘアバンドが印象的な、吊り目がちの「美人」、睦美紅子と出逢った日であり。

    僕の、強いて言うならば「青春」であった、“タンクデサント部”が、始まった日であった。