【12】「ベビーでもヒールでもない男」の「ライバル」の条件
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オカダには、棚橋の後を継ぐベビーの「エース」であり続けながら、一方で、これからの「主役」として「スマートすぎるストンコ+ロック」たるべき、内藤のダーティーファイトをも上回る、ヒールの「ライバル」になって貰わなくてはならない。
この難題を解くヒント。
…それは、過去のある「喜劇」とも言うべき「悲劇」、或いは「惨劇」にありました。
1990.2.10…東京ドーム。
会社の期待を一身に背負った大型新人として、破格のデビュー戦を飾った男。
観客の出した答えは…失笑とブーイングの嵐でした。
その男の名は、北尾光司。
元・横綱という経歴は、紛れもなくエリート。
にもかかわらず何故、北尾は観客に受け容れられなかったか。
一言でいって「しょっぱい」。
まともなプロレスもできないのに、会社の猛プッシュを受けた彼は、ホーガン気取りのヒーロー気取り。
そりゃあ、ウケるはずがありませんわな!(苦笑)
オマケに、詳しくはもう面倒なので端折りますが、大相撲時代から新日時代から更にその後のSWS時代から、とにかく彼の人間性は傲慢と勘違いのカタマリであり、行く先々でトラブルを起こしては放逐される超問題児という。
まぁ…その…もう…アレですよ(笑)。
そして、そんな彼を、いつしか人はこう呼ぶようになりました。
「ナチュラルヒール」と。
…お気付きになられたかと存じ上げます。
会社にヒーロー、すなわち「ベビー」として売り出されながら、観客からは「ヒール」として扱われる存在。
「ベビーでもヒールでもない」内藤。
その「ライバル」の条件。すなわち、
「ベビーでもヒールでもある」オカダ。
それが、木谷オーナーの求めた「答え」であったと、鯱狗は妄想しております。
それも、北尾のような「大失敗の結果」ではなく、「結果としての大成功」を収めなければならない。
木谷オーナー率いる経営陣の、綿密な計算に基づく「ギミック」を、完璧にこなす「操り人形」。
オカダの綱渡りが、始まります。