顔面ブツブツ病
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彗星が通り過ぎた日。
…それは、人種も年齢も性別も関係無く、突然、約10%の人々に発症した。
顔面がブツブツに覆われる。
すぐに、医学的見地はもたらされた。
◆顔面がブツブツに覆われる以外、健康への影響は一切無い。
◆あらゆる身体的接触(粘膜含め)により、非発症者に感染することは一切無い。
◆ただし、片親でも発症者の子供には、一定の割合で遺伝する可能性がある。
その時。
世界は、日本は、これまでの姿を維持できるのだろうか。
発症者の就業は、結婚は、出産は、保証されるのだろうか。
排斥された発症者が、ゲットーを形成することは無いだろうか。
リベラリストで有名なハリウッドスターの夫婦が離婚することは無いだろうか。
貴方の親が、兄弟が、恋人が、伴侶が、子供が、発症した時に。
変わりゆく世界の片隅で。
貴方は、何も変わらずにいられるだろうか。
差別主義を糾弾し、差別主義者を非理性的だと告発できる人々は、
当然、この程度の簡単な思考実験はクリアした上で、そしてなお、
自らの理性に、絶対の自信を持っているのだろう。
…私には無理だ。
いわゆるクチャラーへの嫌悪感を隠せないような、私には無理だ。
私は、私の理性に、そこまでの信頼を置くことはできない。
私は、私の不誠実さを、ただ、不誠実にも認めるのだろう。
顔面ブツブツ病でも、涎ダラダラ病でも、別に何でも良い。
もし、明日、彗星が通り過ぎたとしたら。
SF(少し不思議)なお話。