社畜な鯱狗の妄想雑記

吾唯足知、即身仏。南無、阿弥陀佛。

marionette manticore

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無数の爆撃機が、共感の涙を落とす。
陽炎が立ち込める、その湿原に、
背中から蹴り落とせば、客席からは、
勃起した喜捨が、塹壕を殲滅せんと、
レギオンを成して、襲い掛かるのだろう。
クリスティーヌの屍蝋からは、
鼻がもげるほどの悪臭。速やかに押収。
ファントムをスペイン式絞首に掛けたら、
三つ揃いの背広に身を包んだ、
複眼で睨め回す、紳士の六つ脚で、
タイプライターが、感動の秘話を吐き出す。
大仰なフラッシュライトの瞬く、
のっぺりとした晴れ舞台には、しかし。
シャンデリアだけは、見付からないのだ!
蒸気機関を滅ぼす原子爆弾
情状酌量の余地無き即身仏
眼窩から生えた両翼は、デジタルの厭世。
ヘドロを恍惚として飲み干す人魚姫を、
展示するなら美術館か、博物館か。
どの道、始めから。喜劇しか。
可能性など、無かったはず。末路には。
ファントムの遺書をオークションに出品、
ロールスロイスの車輪が燃え上がる。
通販で買った霊感を天秤に掛けて、
馬力に換算して。昆虫の貴族に献上して。
チープなオペラグラス。宝物庫のドール。
隕鉄を鍛えた鉄環。レギオン。レギオン。
その複葉機は、もう飛ばない。
もう動かないのだ。
即席のエレジー。即席のジプシー。
即席の第三次世界大戦。
俺の心臓を突き破る六つ脚。
俺の頭蓋を突き破る複眼。
俺の可愛いレギオンが見下ろす先には、
ファントム。またの名をサルバドール。
その複葉機は、もう無用の長物。