社畜な鯱狗の妄想雑記

吾唯足知、即身仏。南無、阿弥陀佛。

怪物は

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学校の中庭に、デンと構えた焼却炉の、
赤黒い舌でもって、
ぐわららぁ、ぐわららぁ、と、
夜毎に私を、責めるのです。
手前は幸せにならねば、ならぬ。
手前は幸せにならねば、ならぬ、と。
だから、私は慄きながら、
裏庭に、ヌッと聳えるトーテムポールに、
訊ねに参るので、ございます。
まるで罪人のような、顔をして良いのは、
まさに罪人のように、幸せな者だけだと、
やはり私は、責められるのです。
手前は幸せにならねば、ならぬ。
手前は幸せにならねば、ならぬ。
その幸せが、判らぬ者は、罪人でさえも、
なくって、それでは、虫ケラか。
保健室に、チョンと佇む座敷童の、曰く。
虫ケラにさえ、五分の魂が、あるという。
こうして、籠に入れてやれば、
虫ケラの、たとえ幽霊だって、
ぐわららぁ、ぐわららぁ、と、
良い声で愉しませて、くれるではないか。
罪人にもなれぬ、虫ケラにもなれぬ、
手前は幸せにならねば、ならぬ。
手前は幸せにならねば、ならぬ。
幸せが、八方を塞ぐので、ありますか。
そして私は、知っているのです。
頼みの綱の、音楽室は。
幸せな、焼却炉が、貴女を焼べるのに、
忙しくて。面会謝絶の、札が提げてあり。

何処からか、音が聞こえて、参ります。

ぐわららぁ、ぐわららぁ。
ぐわららぁ、ぐわららぁ。

其れは私の、腹の虫の、
鳴く音で、ありますか。

ぐわららぁ、ぐわららぁ。
ぐわららぁ、ぐわららぁ。