偽典・K
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おとうとは、ひつじを、飼っていました。
おとうとは、ひつじを、可愛がっていました。
おとうとは、ひつじと、幸せでした。
おとうとは、泣きながら。
ひつじを、殴って、殴って、殴って。
殴って、殺しました。
パパは、たいそう、喜びました。
そして、ぼくに、言いました。
「だから、おまえは、だめなのだ」
ぼくは、おとうとを、養っていました。
ぼくは、おとうとを、可愛がっていました。
ぼくは、おとうとと、幸せでした。
ぼくは、泣きながら。
おとうとを、殴って、殴って、殴って。
殴って、殺しました。
パパは、たいそう、喜びました。
そして、ぼくに、ハンコをくれました。
「たいへん、よくできました」
涙が。涙だけが。
パパと、ぼくの、深い絆でした。
パパは、たいそう、喜びました。
パパは、そういう方でした。