即興2017.7.4
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あの飛翔体は、
届くという人がいる。
届かないという人がいる。
そんなことは、どうだって良くて。
今日を選んで、飛び込む人がいる。
鮨詰めの電車のどこかで、
二時間以上も、立ち尽くした、
私がいる。
舌打ちが聞こえる。
舌打ちが聞こえる。
車窓の向こうには、迫り来る暴風雨。
あの飛翔体は、
祈れば止まるという人がいる。
殴れば止まるという人がいる。
それならば。
あの過日の、波は。
祈れば止まったのだろうか。
殴れば止まったのだろうか。
舌打ちが聞こえる。
舌打ちが聞こえる。
政治的な科学、的な宗教、的な政治。
先頭車両が。
たぶん、私。
その山荘の処女膜を、
放射線のように不可視の、
鉄球が貫くように。
車窓の向こうには、迫り来る飛翔体。
その時。
私の脳裏には、
護りたい誰の笑顔も、
浮かばないから。
先頭車両の気狂いが、リフレイン。
舌打ちが聞こえる。
舌打ちが聞こえる。
ズブ濡れの帰宅。
異郷の記念日。
飛翔体の日。
世界文壇構想の記
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もはや、此の世に。
模倣ではない、本当など、
遺されているのだろうか。
この、煉獄のやうな、恋さえも。
過去、或いは、未来のいずれか。
全ては、悉く、語り尽くされた。
あとは、銘を、消費するばかり。
銘を、ぐるぐる、ぐるぐる、と。
--世界は、文壇だ。
学ぶべきは、文学ではない。
文壇を、学ばねばなるまい。
世界を、分断する。
そんな野望は、潰えて久しく。
馬鹿馬鹿しくも、月とは、
綺麗でなければ、ならぬ。
私の、立派な鸚鵡の、
嘴を、御覧なさいな。
ねぇ?
眼球の表面を、
とろりとした銀糸が、流れる。
empress of emptiness
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流砂の底に、沈みゆく免罪符を。
僕らは、我先にと、奪い合う。
腕を引き千切り、脚を引っこ抜き、
頭蓋を叩き割り、臓腑を抉り合う。
血と膿が、地と海を成す。偽書。
原罪は、
その聖餅を崇めて、食さぬこと。
血と膿、濃密に立ち込める汗さえも、
本当は。
中空にワイヤーで吊られた、
ガラス張りの無菌室の、
一つの実験に、過ぎないなんて。
匣の中の狂騒。錯乱した獣の咆哮を上げて、
貴女の喉笛を噛み千切る、僕を。
匣の外の静謐。デスクでコーヒーを片手に、
パンチカードを透かした、僕が。
見上げる。中空の脳漿。レギオン。薬局。
この、真っ白な、防音室の中空へと、
八本のワイヤーで吊られた無菌室に。
ボタンを一押し。また一枚の、
免罪符を、投下する。
群れなす亡者のような僕らを、
僕らは。冷ややかに見上げる。
中空の受肉。中空の聖別。
僕らの。血と汗と涙は、デジタル。
量産して、安価に提供する。
そして、僕は。
清潔な白衣を纏った、貴女の、
頬に。そっと。
触れた。指先に。
ぷつりと。赤黒い。珠が。
生まれ。防音室の、
磨き上げられた、タイルの上に。
一滴。溢れ落ちる。
頭上から。降り注ぐ、無限の聖餅は、
まるで、流砂のようだと。
貴女の顔をした、貴女の声をした、
監視カメラが。
嗤う。
中空の神。原罪を、札束で買う。
吸血鬼に。御馳走を申し出る、
殺鼠剤と、解毒剤の、カクテル。
高度に電子化された、免罪符。防音室。
中空。
血と膿に塗れた、無菌室で。
嗤う。
灼
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そして、燃え落ちるのは、
月か?俺の瞼か?
意図せぬ、愛おしさを噛み殺し、
俺の毛皮が、逆立つのを感じる。
愛撫とは。グラスの中で、
稀釈された殴打。
だから、優雅に飲み干して、
鉤爪で握り潰す。
銀食器の、鋭利な恍惚。
その、千年の楼閣から睥睨すれば、
麦畑には、鬼火が走るばかり。
地の塩が満ち、痩せ細る神話。
そうだ。全ては、意図に依る。
俺の。さもなくば、神の。
足の踏み場も無い、グラスの破片。
銀食器には、嘲笑うサロメの首級。
やがて、時計塔へと。月が、
墜ち、刺さるだろう。
経血と呪詛を撒き散らして、
泣き、喚くのだろう。
そして俺は、稀釈を止める。
顎門から、水銀を垂れ流しながら、
俺の、俺の、俺の、牙が!
血が。蒼い、血が。
硫黄の焔に抱かれ。
そして、