【5】天才・猪木が「成功させた仕掛け」と「失敗した仕掛け」
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ここで時代を遡ります。
かつての猪木・新日本プロレスが、爆発的にヒットさせた「ストーリーライン」。
それは、長州力による「世代交代闘争」アングルだと考えます。
「猪木の異種対抗戦」も、「タイガーマスクの四次元殺法」も、
それは特異な天才レスラーが魅せた「点」でした。
それに対して、長州力の「俺は藤波の噛ませ犬じゃねぇ!」というアティチュードの爆発は、明確に「線」を生み出しました。
そして、長州力は、この維新革命の背後には、
実は猪木による強烈な「扇動」があったことを示唆しております。
(詳しくは『真説・長州力』を御拝読願います)
一方で、猪木は「海賊男」「たけしプロレス軍団」など、
ズッコケるどころか暴動寸前の、大失敗の仕掛けもまた、数々と生み落としております(笑)。
その「成功」と「失敗」を分けたモノは何か。
「ファンは『リアル』な感情を求めており、子供騙しの『ギミック』を欲してはいなかった」
ということだと、鯱狗は考えております。
それがすなわち「広い意味でのストロングスタイル」として、
現在まで日本のファンの求める「伝統」となっているのではないかと考えるのです。
端的に言えば、日本の観客は、
「ストーリーラインを、作られたアングルとして明からさまに提示されるのを嫌う」
ということです。
これが、日本とアメリカのファンの大きな違いだと考えます。
アメプロが「モキュメンタリー」として許容されるのに対して、
日本のプロレスは「ドキュメンタリー」の顔を強く求められる。
どちらが良い悪いではなく、それぞれの「伝統」として、鯱狗は理解しております。